日本国のドローンにおける防衛の立ち位置(防衛白書 令和四年版より)
目次
サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害やAIを搭載したドローンの活用
サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害やAIを搭載したドローンの活用など、純粋な軍事力に限られない多様な手段により他国を混乱させる手法はすでにいくつもの実例があり、こうした技術は、軍事と非軍事の境界を曖昧にし、いわゆるグレーゾーンの事態を増加・拡大させる要因ともなっている。
ドローンを活用したスウォーム(群れ)攻撃の脅威に有効に対処
平素からの情報収集・分析に基づき、レーダーや通信など、わが国に侵攻を企図する相手方の電波利用を無力化することは、他の領域における能力が劣勢の場合にも、それを克服してわが国の防衛を全うするための一つの手段として有効である。このため、2022年度予算においては、相手の電波利用を無力化することで、火力発揮を支援し、陸上戦闘をはじめ各種戦闘を有利にするNEWSの取得や、NEWSを装備する電子戦部隊の配備を進めることとしている。また、相手方の脅威圏外(スタンド・オフ・レンジ)から妨害対象に応じた効果的な電磁波妨害を実施し、自衛隊の航空作戦の遂行を支援する、空自のスタンド・オフ電子戦機の開発、航空機やミサイルなどに搭載されているレーダーや通信機器が使用する電波を探知・識別し、このレーダーや通信機器を無力化する艦艇用の電波探知妨害装置の研究などを進めることとしている。さらに、多数のドローンを活用したスウォーム(群れ)攻撃の脅威に有効に対処する観点から、高出力マイクロ波照射技術の実証や高出力レーザーシステムの研究などに関する予算を引き続き計上している。
全天候型ドローンも活用して、被災現場の情報収集及び映像伝送を実施
大雨の影響で、同月3日午前、静岡県熱海市内の住宅地域で土石流が発生したことから、同日、陸自第34普通科連隊長(板妻)は静岡県知事から災害派遣要請を受理し、人命救助活動、被害情報収集、連絡員の派遣などを実施した。これらの活動は同月31日に同知事から災害派遣撤収要請を受理するまでの約1ヵ月にわたり継続され、その間、活動人員延べ約27,000人(うち、被災現場における活動人員は延べ約11,000人)が投入された。具体的な活動は、まず、人命救助活動などに関し、陸自第34普通科連隊(板妻)、第32普通科連隊(大宮)、第1戦車大隊(駒門)、空自中部航空警戒管制団(入間)、第3術科学校(芦屋)などの部隊が現場付近の捜索救助にあたった。また、陸自第34普通科連隊、第1施設大隊(朝霞)などにより、国道135号線及び活動地域付近の道路上に堆積した土砂などを除去し、道路啓開を実施した(道路啓開の累計:約1,020m)。被害情報収集に関しては、陸自東部方面航空隊(立川)がUH-1ヘリコプターにより、被災現場の情報収集及び映像伝送を実施するとともに、陸自陸上総隊(朝霞)、第1師団(練馬)、空自航空総隊(横田)の全天候型ドローンも活用して、被災現場の情報収集及び映像伝送を実施した。また、静岡県庁、熱海市役所及び伊豆山現地本部に対し、部隊から連絡員を派遣し、関係自治体などとの緊密な連携を図った。
人工知能(AI)を活用した戦闘支援無人機、複数のドローンに対処可能な高出力マイクロ波
将来の戦闘様相の変化に対応する優れた防衛装備品を創製できるよう、従来の装備体系を変えるような技術に対して重点的に投資し、技術的優越を確保するため、先進技術の活用に取り組むことが重要である。例えば、人工知能(AI)を活用した戦闘支援無人機、複数のドローンに対処可能な高出力マイクロ波(HPM)照射技術、経空脅威に低コストで、より速やかに対応が可能な高出力レーザーやレールガンなど、ゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術の研究開発を進めている。
小型のドローンを自衛隊機等により輸送し、ウクライナ政府への提供を実施
2022年2月のロシアによるウクライナ侵略を受けて、ウクライナ政府からの装備品等の提供要請を踏まえ、自衛隊法に基づき非殺傷の物資を防衛装備移転三原則の範囲内で提供するべく、3月8日に国家安全保障会議において、防衛装備移転三原則の運用指針を一部改正し、2022年3月から、防弾チョッキ、鉄帽(ヘルメット)、防寒服、天幕、カメラ、衛生資材・医療用資器材、非常用糧食、双眼鏡、照明器具、個人装具、防護マスク、防護衣、小型のドローンを自衛隊機等により輸送し、ウクライナ政府への提供を実施した。
民生用を含むドローンを用いたテロ事案やテロ未遂事案
近年、民生用を含むドローンを用いたテロ事案やテロ未遂事案が各国で発生しており、それらの中には軍事施設を対象としたものも含まれている。わが国においても自衛隊の施設や在日米軍の施設・区域に対するドローンを用いたテロ攻撃が発生する可能性があるが、これらの施設に対する危険が生じれば、わが国を防衛するための基盤としての機能に重大な支障をきたしかねない。このため、2019年6月13日、改正小型無人機等飛行禁止法が施行され、防衛大臣が指定する自衛隊の施設や在日米軍の施設・区域の上空及びその周辺における小型無人機等の飛行が禁止されることとなった。2022年3月末現在、主要部隊司令部などが所在する149の自衛隊の施設及び30の在日米軍施設・区域が対象施設に指定されている。