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ソフトウェアセキュリティの未知の領域を探索するファジング(Fuzzing)

ペネトレーションテスト&バグバウンティ

ファジングは、ソフトウェアやシステムのセキュリティや品質を向上させる手法で、ランダムまたはスマートな方法で異常なデータを入力し、プログラムの挙動を検証することです。これにより未知の脆弱性やバグを発見し、修正することが可能となります。

ファジング(Fuzzing)とは

ファジングは、ソフトウェアテストの手法で、大量のランダムデータを対象のソフトウェアやプログラムに注入し、その挙動を観察する手法です。
 
主な目的は、未知の脆弱性の発見、効率的なテスト、およびセキュリティの向上にあります。未知の脆弱性は通常の手法では見過ごされがちなため、ファジングはセキュリティの向上に寄与します。しかし、誤検知や全ての脆弱性の発見には限界があり、注意深い検討が必要になります。

ファジングの機能の流れ

ファジングツールがテストデータを生成します。これは、ランダムなデータや既知のパターンに基づくデータで構成されます。このテストデータは、通常の使用パターンから逸脱したものであり、システムやアプリケーションにとっては未知の挙動を引き起こす可能性があります。
生成されたテストデータを、対象のソフトウェアに注入します。これにより、通常のテストデータでは検出できないエッジケース(通常のケースや一般的な状況から外れて特殊で稀な状況や条件)や異常な入力に対してテストが行われます。注入されたデータがランダムであるため、未知の脆弱性が発見される可能性が高まります。
 
次に、ソフトウェアが生成されたテストデータを処理し、その挙動を監視します。もし予期せぬエラーやクラッシュが発生すれば、それは潜在的な脆弱性を示唆しています。ファジングツールはこれらの問題を収集し、開発者やセキュリティ担当者に報告され、修正が行われます。
 
この動作により、ファジングは未知の脆弱性を見つけ出すことができます。そのため、セキュリティの向上やソフトウェアの品質確保において重要な手法となっています。
 

テストデータの自動生成について

ファジングは、セキュリティテストにおいて重要な役割を果たす手法の一つですが、その基盤となる要素の一つがテストデータの自動生成です。ファジングにおいてテストデータを自動的に生成することは、セキュリティテストを実現する上で重要になります。
1.ランダムデータの活用
ファジングでは、ランダムデータを利用してテストデータを生成します。これにより、予測が難しい入力やエッジケースが網羅的にテストされ、通常の手動テストでは見逃されがちなセキュリティ上の脆弱性が発見される可能性が高まります。
 
2.ブラックボックスファジング
ブラックボックスファジングでは、対象のソフトウェアの内部構造やコードの詳細を知らずに、外部からランダムなデータを注入してテストを行います。この手法は、セキュリティ専門家やハッカーが悪意を持ってシステムを攻撃する際の手法に類似しており、未知のセキュリティホールを見つけることが期待されます。
 
3.ホワイトボックスファジング
ホワイトボックスファジングでは、ソフトウェアの内部構造やコードにアクセスし、その情報を基にしてより洗練されたテストデータを生成します。これにより、特定のコード領域や複雑な処理に焦点を当て、より深いレベルでのセキュリティテストが可能となります。
 
ファジングのテストデータの自動生成は、効率性と網羅性のバランスを取りながら作成します。ただし、完全な自動化には限界があり、経験豊富なセキュリティ専門家の意見と手動テストの組み合わせが最も効果的なアプローチとされています。
 
 

ファジングのテスト手法

ファジングのテスト手法には、様々なアプローチがあります。以下は、代表的なファジングのテスト手法です。

ブラックボックスファジング

ブラックボックスファジングは、対象システムやアプリケーションの内部構造やコードの詳細を知らない状態でテストを行う手法です。この手法は、外部からのランダムなデータやテストデータを注入して、対象の挙動や潜在的な脆弱性を探ります。
 
1.内部知識は不要
ブラックボックスファジングは、対象のシステムについての事前の知識がなくても実施可能です。これにより、攻撃者が悪意をもってアプローチする場合と同様に、システムがどのように応答するかを検証できます。
 
2.ランダムデータの注入
ブラックボックスファジングでは、ランダムなデータを生成し、それをシステムに注入してテストを行います。このランダムなデータは、通常の使用ケースから逸脱し、未知のエッジケースや予測が難しい挙動を引き起こす可能性があります。
 
3.未知の脆弱性の発見
ブラックボックスファジングは未知の脆弱性やセキュリティホールを発見するのに有効です。内部構造を知らない状態で行われるため、攻撃者が外部からどのようにシステムに影響を与えるかを模倣することができます。
 
4.広範なテスト
ブラックボックスファジングは、特定の部分にフォーカスせず、システム全体を包括的にテストするのに適しています。これにより、システム全体に潜む未知のセキュリティリスクを発見することができます。
 
5.自動化の利点
ブラックボックスファジングは自動化が可能であり、大量のランダムデータを注入してテストを行うため、効率的かつ迅速にセキュリティテストを実施できます。
 
ブラックボックスファジングは、外部からの攻撃に近い形でセキュリティテストを行う手法として、特に複雑なシステムやセキュリティの向上が求められる環境で有用です。
 

ホワイトボックスファジング

ホワイトボックスファジングは、対象のソフトウェアやシステムの内部構造やコードの詳細を知っている状態でテストを行います。この手法は、内部の情報を利用してより洗練されたテストデータを生成し、特定のコード領域や複雑な処理にフォーカスすることができます。
 
1.内部構造の理解によるテスト
ホワイトボックスファジングでは、対象のシステムやアプリケーションの内部構造についての深い理解が必要です。これにより、特定のコードパスやデータフローに注目することができ、より精緻なテストが可能です。
 
2.モデルベースを生成
ホワイトボックスファジングでは、ソフトウェアのモデルを基にしてテストデータを生成することが一般的です。モデルベース生成により、ソフトウェアの仕様や要件に基づいてテストを行い、システムの期待される挙動に焦点を当てることができます。
 
3.特定のコード領域へのテストデータ生成
ホワイトボックスファジングでは、特定のコード領域やセキュリティに関連する箇所に的確にテストデータを生成できます。これにより、セキュリティの脆弱性が多く発生する可能性のある部分を効果的にテストできます。
 
4.コードカバレッジの向上
ホワイトボックスファジングは、テストの対象となるコードカバレッジを向上させることができます。これにより、特定のコードがテストされていない箇所を発見し、網羅的なセキュリティテストが実現できます。
 
5.モデルとしてのガイドライン
ホワイトボックスファジングは、ガイドラインやモデルとしての情報を活用してテストを行うため、開発者やセキュリティエキスパートがシステムの設計段階からセキュリティを考慮したモデルを構築しやすくなります。
 
ホワイトボックスファジングは内部情報を有効に利用する手法として、特にソフトウェアの設計段階からセキュリティを組み込むための手段として重要です。
 

マットリクスファジング

マットリクスファジングは、ファジングの進化した手法の一つであり、従来の単一のファジング手法ではなく、複数の手法を組み合わせて利用するアプローチです。この手法では、異なるファジングテクニックを統合することで、セキュリティテストの効果を向上させます。
 
1.複数の手法の統合
マットリクスファジングでは、ランダムデータ生成、モデルベース生成、ブラックボックス、ホワイトボックスなど、異なるファジング手法を組み合わせて使用します。これにより、各手法のメリットを生かしながら、様々な脆弱性を網羅的にテストできます。
 
2.セキュリティリスクの多角的な評価
マットリクスファジングは、システムやアプリケーションに対するセキュリティリスクを多角的に評価することができます。異なる手法を組み合わせることで、ブラックボックスとホワイトボックスの双方の利点を享受しつつ、全体のセキュリティポストチャを向上させます。
 
3.柔軟性と適応性
マットリクスファジングは柔軟性があり、特定のプロジェクトやアプリケーションの特性に応じて手法を組み合わせることが可能です。これにより、異なる開発環境やセキュリティニーズに対応することができます。
 
4.効果的な脆弱性発見
異なる手法の統合により、通常の手法では見逃されがちな複雑な脆弱性やエッジケースを発見することが期待されます。セキュリティテストの効果が向上し、開発者はより信頼性の高いソフトウェアを構築できます。
 
5.継続的な改善
マットリクスファジングは進化し続けるセキュリティランドスケープに適応するため、継続的な改善が可能です。新たなファジング手法やテクニックが登場した際にも、柔軟に組み込んで利用することができます。
 

ファジングツールについて

ここでは、AFL(American Fuzzy Lop)、Peach Fuzzer、libFuzzerのファジングツールについて、説明します。

AFL(American Fuzzy Lop)

AFL(American Fuzzy Lop)は、セキュリティテストやバグ探しに使われるツールで、特にソフトウェアのプログラムに対して異常な入力データを使ってテストするのに使われます。
AFLはプログラムに対してたくさんのランダムなデータを送り込んで、どのデータが問題を引き起こすかを見つけるツールです。これによって、ソフトウェアの品質を向上させることが期待されます。
 
1.ランダムなデータを使ってテスト
AFLは、プログラムにランダムなデータを送り込んで、どんな入力に対しても正しく動くかどうかを確認します。ランダムなデータを試していくことで、プログラムの動作を探索し、問題やバグを見つけることができます。
 
2.スマートな変異を採用
AFLはランダムなだけでなく、スマートな方法でデータを変化させます。もしプログラムが前のデータでエラーを出した場合、それを基にして新しいデータを生成してみます。これによって、エラーが見つかったデータに似たデータを生成し、同じエラーが再現される可能性を高めます。
 
3.効果的に未知のバグを見つける
AFLは、プログラムのコードの異なる部分を試すことで、通常のテストでは見つけにくい未知の問題や脆弱性を見つけるのに役立ちます。これにより、開発者やセキュリティエンジニアはプログラムをより堅牢にする手助けを受けることができます。
 

Peach Fuzzer

Peach Fuzzerは、セキュリティテストやソフトウェアの品質向上のためのツールで、特にプロトコルやデータフォーマットに対するテストに焦点を当てています。
Peach Fuzzerはソフトウェアが使う通信やデータの形式を理解し、それを元にして自動的にたくさんのテストを作って、ソフトウェアが正しく動作するかどうかを確かめるツールです。これによって、開発者は潜在的な問題を見つけて修正する手助けを受けることができます。
 
1.プロトコルやデータフォーマットのテスト
Peach Fuzzerは、ソフトウェアが使う通信プロトコルやデータの構造をテストするのが得意です。例えば、ウェブサーバーやネットワーク通信など、様々な種類のソフトウェアが正しく動作するかどうかを確認するために使います。
 
2.モデリングを使ったテストケース生成
Peach Fuzzerは、テスト対象のプロトコルやデータフォーマットをモデル化します。これは、そのソフトウェアや通信の構造を理解するための設計図のようなものです。そして、このモデルを基にして自動的にテストケース(テストデータ)を生成します。
 
3.データの変異や組み合わせ
テストケースを生成するだけでなく、Peach Fuzzerは生成されたテストケースを変異させたり、組み合わせて新しいテストケースを作ります。これによって、さまざまな場面や条件でソフトウェアがどのように反応するかを確認します。
 
4.テストの自動化
Peach Fuzzerは、これらのテストを自動的に行います。開発者が手動で数えきれないほどのテストを作る代わりに、Peach Fuzzerが自動的に多くのテストを生成し、実行してくれます。
 

libFuzzer

libFuzzerは、ソフトウェアのテストやセキュリティの向上を目的としたツールの一つで、特にCやC++で書かれたプログラムに対して使われます。
libFuzzerはプログラムにランダムなデータを送り込んで、問題やエラーがないかを見つけるツールです。これによって、プログラムがより安定して動作し、セキュリティの向上に寄与します。
 
1.ランダムなデータでプログラムをテスト
libFuzzerは、プログラムにランダムなデータを送り込んで、どのように反応するかを確認します。これによって、通常のテストでは見つけにくい潜在的な問題やエラーを見つけることができます。
 
2.スマートな変異を利用
libFuzzerは、ランダムな変更だけでなく、前回のテストで問題が起きたデータを基にして新しいデータを生成します。これによって、同じエラーや問題が再現される可能性を高めます。
 
3.カバレッジ情報を利用
libFuzzerは、プログラムがどれだけのコードを実行したか(カバレッジ情報)を追跡します。まだ実行されていない部分のコードを見つけることで、未知の問題や脆弱性を発見する手助けになります。
 
4.自動で最小の問題を見つける
エラーが見つかった場合、libFuzzerはそのエラーを最小限の再現可能なデータにまで縮小してくれます。これによって、開発者は問題の原因を特定しやすくなります。
 
 

ファジングの実行と結果の解析

ファジングの実行は、ターゲットに注入される異常なデータによってプログラムがどのように振る舞うかを評価する重要なステップです。以下は、ファジングの実行とその結果の解析に関する基本的な手順です。
1.ファジングツールの設定
ファジングツールのパラメータやオプションを設定します。ファジングの手法やテストデータ生成の方法によって異なる設定が必要です。設定には、ファジング対象のプログラムや実行環境に合わせた適切な設定が含まれます。
 
2.ファジングの実行
ファジングツールを起動し、異常データをプログラムに注入して実行します。ファジングの実行中は、ツールが自動的にテストデータを生成し、プログラムをテストするサイクルが繰り返されます。
 
3.クラッシュやエラーのモニタリング
ファジング中に発生したクラッシュやエラーをモニタリングします。ファジングツールは、異常な挙動やプログラムのクラッシュを検出し、それをログに記録します。
 
4.カバレッジの確認
ファジングの実行中にプログラムが通過したコードのカバレッジを確認します。カバレッジ情報は、どの程度プログラムがテストされたかを示し、未探索のコード領域を特定するのに役立ちます。
 
5.ファジング結果の収集
ファジングの結果、特にクラッシュやエラーの詳細な情報を収集します。ツールが生成したテストデータや、それによって引き起こされたプログラムの変化も確認します。
 
6.解析と修正の計画
ファジング結果を詳細に解析し、発見された脆弱性や問題の深堀りを行います。解析結果に基づいて、セキュリティの問題を修正するための計画を立てます。
 
7.結果の文書化と報告
ファジングの実行と結果の解析の過程を文書化し、報告書としてまとめます。これにより、他の開発者やセキュリティエンジニアが問題を理解しやすくなります。
 
ファジングの実践では、実行と解析が継続的に行われ、プログラムのセキュリティを向上させるための改善策が導き出されます
 

ソフトウェアセキュリティの未知の領域を探索するファジング(Fuzzing)のまとめ

ファジングはソフトウェアセキュリティのテスト手法として、未知の脆弱性やセキュリティホールを発見する重要な役割を果たしています。
 
ソフトウェアセキュリティの未知の領域を探索するための優れた手法であり、これからもセキュリティの向上に重要なツールとして進化し続けることが期待されます。